農耕を罪悪扱いする論調は、特に欧米の社会学者や歴史学者に多い。
どちらかといえば機械工業や富商がこの世に招いて来た禍根のほうが
はるかに大きいにもかかわらず、まず農耕を問題視するのは、連中が
商工会系のパトロンに飼い馴らされた御用学者だからなようである。
士農工商の序列を厳格化した社会を安定的に統治する手法は、すでに確立されている。
重農主義でも構わないというのなら、戦争一つない時代を何百年でも続けて行ける。
しかし、先祖代々農地に縛り付けられたままでいるのなんて耐えられないという
ワガママがいるようなら、その分だけイノベーターとやらによる商工業振興の需要も生ずる。
それが社会の不安定化の根本要因となり、引いては戦争や亡国の危機すらをも招いてしまう。
アメリカの雇用統計も農業従事者を除外して毎月発表されているように、
現代社会においても経済の発展と農業は別物扱いだし、農業まで金儲けのために
ないがしろにしてしまうようなことがあれば、それがそのまま破滅の危機にも直結する。
「士農工商」は作為的な序列であるという以上に、守成がこの世の安危を致命的に左右する
仁知上の序列である。とはいえどこまで商工業に抑制を利かせるかというのも加減の問題であり、
ただひたすら賎民扱いで済ませた朝鮮儒教のような真似に走るのもまた仁者の心がけではないと言えよう。
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